まず正確な情報を調べます。
2代目ウォークマン
スマホにイヤホンを挿して、通学電車で好きな曲を流す。いまは誰もが当たり前にやっていますが、これが「当たり前ではなかった時代」があります。音楽を外に持ち出して歩き回るという発想が、まだ珍しかった時代です。
その流れを一気に広げたのが、1981年に登場した**2代目ウォークマン「WM-2」**です。初代の話は有名ですが、2代目の役割はあまり語られません。この記事では、2代目が何を変え、当時の人にとってどれほど衝撃だったのかを、できるだけ正確な情報をもとに振り返ります。
※写真やイラストは使わず、各見出しの最後に参考にした情報源のリンクを付けています。
そもそも「初代ウォークマン」は何がすごかったのか
2代目の話の前に、初代を押さえておきます。
初代機「TPS-L2」は1979年7月1日に発売されました。価格は3万3000円です。録音機能がなく、再生専用のステレオカセットプレーヤーでした。「録音できない機械は売れない」という声が社内外にあったそうですが、結果は大ヒットでした。
生まれたきっかけは、ソニー創業者のひとり井深大さんの要望だったと伝えられています。出張で飛行機に乗っているときも、いい音で音楽を聴きたいという思いでした。
名前の由来も面白いです。ソニーによると、当時『スーパーマン』が人気だったことと、ベースになった機種が「プレスマン」という名前だったことから決まったそうです。
発売直後の売れ行きは、実はゆっくりでした。それでも約2か月で最初の3万台が売り切れ、そこから勢いが増していきます。AFPの記事によると、発売から10年で5000万台のウォークマンが売れました。
▶ 参考リンク
- ウォークマン40歳:「音楽を持ち歩く」ライフスタイルの始まり(nippon.com)
- ウォークマン、誕生から30年(AFPBB News)
- ライフスタイルを変えた画期的製品…ソニーから初代ウォークマン発売(現代ビジネス)
2代目「WM-2」が登場する
初代の発売から1年7か月後の1981年2月、2代目ウォークマン「WM-2」が発売されました。価格は3万2000円で、初代より1000円下がっています。
nippon.comの解説によると、初代は既存の製品をベースにした機種でした。一方のWM-2は「ウォークマンとはどうあるべきか」を考えて設計された最初の機種と言えるそうです。つまり、2代目は「ウォークマンをゼロから考え直した」モデルです。
- 小型化:カセットケースのサイズを目標に、コンパクトになりました。
- 操作ボタンの移動:ボタンを側面から前面に移したことで、デザインが洗練されました。
- メタルテープに対応:高音質なメタルテープを使えるようになり、音への期待に応える機種になりました。
海外のファンが集まるデータベース「Walkman Library」には、単3電池2本で約9時間再生、重さ280gというスペックが載っています。いまのワイヤレスイヤホンからすると重いですが、当時としては十分に「持ち歩ける」サイズでした。
▶ 参考リンク
初代が「発明」なら、2代目は「定着」
少し乱暴にまとめるなら、初代は「発明」、2代目は「定着」です。
スマホでいえば、初代は「そんな機械があるんだ」という驚きの段階でした。2代目は「みんなが持つのが当たり前」に近づく段階です。
実際、WM-2は海外でも人気が高く、当時を知る外国人からは「一番記憶に残るウォークマンはWM-2だ」という声もあるそうです。
もうひとつ見逃せないのが、買う人の広がりです。1981年5月の日経流通新聞には、「ソニーのウォークマン2、中高年に食い込む」という見出しの記事が出ています。最初は流行に敏感な若者のグッズだったウォークマンが、2代目の頃には幅広い世代に受け入れられつつありました。
▶ 参考リンク
「音楽は家で聴くもの」という常識が崩れた
ウォークマン以前、音楽は基本的に「家の中で」「スピーカーで」聴くものでした。レコードもラジオも、聴く場所は家、あるいはカーステレオやラジカセのような据え置きに近い機械です。
ウォークマンは、ここを変えました。ブリタニカ国際大百科事典の説明では、音楽を聴きながら町を歩くことが社会現象になり、やがて日常的な行為になったとされています。
通学路も、通勤電車も、散歩道も、自分だけの音楽に包まれる場所に変わりました。
ここは、いまのスマホ世代にもピンとくるところだと思います。
- 電車でイヤホンをして、自分のプレイリストを流す
- 勉強や作業のBGMを自分で選ぶ
- 外の世界を「サウンドトラック付き」にして歩く
この感覚の原型を作ったのが、ウォークマンです。
▶ 参考リンク
「マイベストテープ」文化と、音楽の「編集」
ウォークマンが広がると、カセットテープの使い方も変わりました。
nippon.comの特集には、好きな歌手の曲からお気に入りを選んで作った「My Best」のテープを、通学電車で繰り返し聴いたという回想が出てきます。
いまならストリーミングでプレイリストを作る感覚です。当時は好きな曲を順番にカセットへ録音して、自分だけの1本を作っていました。曲順を考え、テープの長さに合わせて調整し、ときには手書きのラベルも付けます。
つまり、ウォークマンは音楽を「聴く」だけでなく、「自分で編集して持ち歩く」文化も育てました。今の「プレイリスト文化」のご先祖と言っていいでしょう。
▶ 参考リンク
街の風景と、大人たちのざわつき
ウォークマンが広がるにつれて、街の風景も変わりました。
1981年1月10日の日経新聞は、大学入試の会場でイヤホンをつけて音楽を聴く受験生の姿を取り上げ、「緊張の中にも余裕――“ウォークマン女学生”も」という見出しを付けています。試験直前に音楽で気持ちを整える光景が、新聞記事になるほど新鮮だったのです。
一方で、反発もありました。nippon.comが紹介する黒木靖夫さんの著書には、大人たちがウォークマンを「外界拒絶的な自己陶酔の道具」と批判し、孤独な人間が増えることを心配し始めた、という記述があります。
これは、スマホやワイヤレスイヤホンが広がったときの「歩きスマホ」「ながら聴き」への反応とよく似ています。新しいテクノロジーが定着するとき、世代間の違和感はいつの時代も起きるようです。
▶ 参考リンク
ライバルが続々参入、「ヘッドホンステレオ」という新市場
ウォークマンの成功を見て、他社も動き出しました。nippon.comの年表によると、1980年にはAIWAが「カセットボーイ」を発売し、以降ライバルメーカーが相次いでポータブルのヘッドホンステレオ市場に参入しています。
その結果、「ウォークマン」は商品名を超えて、携帯カセットプレーヤーそのものの代名詞になりました。他社製品まで「ウォークマン」と呼ぶ人が増えたほどです。
2代目が出た1981年は、この競争が本格化していく時期にあたります。メーカー同士が小型化や機能を競い合ったことで、ウォークマンの進化も加速しました。
- 1982年:ラジオ付きのモデル「WM-F1」が登場
- 1982年:ドルビーとオートリバース機能を備えたモデルが登場
- 1983年:ついにカセットケースサイズの「WM-20」が登場
- 1984年:CD版の「ディスクマン」が登場
- 1985年:ガム型充電池を採用した「WM-101」が登場
2代目が示した「小さく、洗練された」方向性が、その後の進化の土台になっていきます。
▶ 参考リンク
言葉になった「Walkman」、世界へ
ウォークマンの影響は、言葉の世界にも及びました。
nippon.comの年表によると、1981年にはフランスの歴史ある百科事典「プチ・ラルース」に「Walkman」が掲載されました。1986年にはオックスフォード英語辞典にも載っています。
一企業の商品名が、外国語の辞書に載るのは相当なことです。それだけ世界の暮らしに入り込んだ証拠でしょう。2代目が海外でも人気だったことは、この流れを後押ししたはずです。
また、1980年には世界的な指揮者カラヤンがウォークマンを愛用していると話題になりました。若者の流行グッズにとどまらず、音楽の専門家にも「いい道具」として受け入れられていたことがうかがえます。
▶ 参考リンク
今の私たちの「音楽ライフ」とのつながり
ここまでを、いまの暮らしに置き換えてみます。
| ウォークマン時代 | いま |
|---|---|
| カセットテープに録音して持ち歩く | スマホにアプリで音楽を入れる、ストリーミングで聴く |
| 「My Best」テープを作る | プレイリストを作る |
| ヘッドホンで自分だけの世界に入る | ワイヤレスイヤホンで通学・通勤中に聴く |
| 大人が「閉じこもっている」と心配する | 「ながらスマホ」への注意喚起 |
| 他社が続々参入して小型化競争 | 各社のイヤホンやプレーヤーの競争 |
道具はカセットからスマホへ変わりましたが、「好きな音楽を、好きな場所で、自分のために聴く」という楽しみ方の骨格は、ウォークマンが作ったものです。
ちなみにAV Watchによると、カセットテープ型ウォークマンの世界累計販売台数は2億2000万台です。フラッシュメモリ型などのデジタルタイプも含めると、約4億台(2010年時点)に達しています。
▶ 参考リンク
まとめ:2代目ウォークマンが残したもの
最後に要点を整理します。
- 1981年2月に発売された2代目「WM-2」は、ウォークマンをゼロから設計し直したモデルだった。 価格は3万2000円で、カセットケースサイズを目指した小型化、操作ボタンの前面配置、メタルテープ対応が特徴だった。
- 初代が「発明」なら、2代目は「定着」。 海外でも人気を集め、日本では中高年にも広がり始めた。
- 音楽は「家で聴くもの」から「持ち歩くもの」に変わった。 街を歩きながら聴く行為が、社会現象を経て日常になった。
- 「My Best」テープに代表される、自分で編集する音楽文化が育った。 今のプレイリスト文化の原型といえる。
- 新しい技術への大人の戸惑いは、昔も今も変わらない。 ウォークマンも「外界拒絶的」と批判された。
- 「Walkman」は辞書に載る言葉になった。 1981年にプチ・ラルース、1986年にオックスフォード英語辞典に掲載された。
スマホで音楽を聴くたびに、そのルーツが1980年代の小さなカセットプレーヤーにあると思い出してみてください。いつもの音楽が、少しだけ違って聴こえるかもしれません。
参考にした情報源(まとめ)
- ウォークマン誕生物語(nippon.com)
- ウォークマン40歳:「音楽を持ち歩く」ライフスタイルの始まり(nippon.com)
- ウォークマン30周年の記事(AV Watch)
- ウォークマン、誕生から30年(AFPBB News)
- ライフスタイルを変えた画期的製品…ソニーから初代ウォークマン発売(現代ビジネス)
- ウォークマン(ブリタニカ国際大百科事典・コトバンク)
- ランドマーク商品としての携帯オーディオ機器(同志社大学リポジトリ)
- WM-2の仕様(Walkman Library)
追記:ウォークマンではないんだけど、外でイヤフォンで音楽を聴いている時に
こんな大きな音が鳴っていれば誰にも聴かれてないと思ったのか「ブフォッ」って
オナラをしたことがあります。

コメント