劇場とテレビの違いに驚いた日からすべてが始まった

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27インチのテレビとAV-300が教えてくれた、映画の“本当の姿”

あの頃、僕が使っていたのは14インチの4:3ブラウン管テレビだった。 そこにAV-300をつないで背後から音が飛んでくる体験をしてしまうと、 次に気になり始めたのは“画面の小ささ”だった。 そして中古で手に入れた27インチのモニターが、 家庭で観る映画の世界を一気に広げてくれた。

■ 1986年、家庭にサラウンドがやってきた                 NEC AV-300との出会い

1986年、僕は初めて“家庭用サラウンド”というものを体験した。 きっかけは、今で言うバラエティショップのような店で見つけた NEC AV-300。 中古ではないのに、どこから流れてきたのか分からない未開封品が棚に並んでいた。

このアンプの存在を知ったのは、当時のAV雑誌だ。 「映画をテレビのスピーカーだけで観るのはもったいない!」 「ビデオのステレオ信号には、実はリアスピーカーに回る音が入っている!」 そんな記事にワクワクしながら、気づけばAV-300を手にしていた。

正直、作りはチープだった。 中身はスカスカ、スイッチはプラスチックのペコペコしたタイプ。 オーディオアンプのような重厚なボリュームつまみもない。 でも、当時の僕には“未来の機械”に見えた。

アンプだけでは何もできないので、フロントには昔の大きなステレオスピーカーを、 リアにはコンポのスピーカーをつないだ。 そして、ステレオ音声の映画を再生してみた瞬間──世界が変わった。

画面に映っていない音が、突然背後から爆音で飛んでくる。

『ブレードランナー』のスピナー、 『帝国の逆襲』の偵察ボット。 どちらも、画面に登場する前に“背後から”やって来るのだ。

映画館よりも極端で、映画館よりも驚いた。 後ろから前へ音が移動するあの感覚は、今でも忘れられない。

付属のスピーカーケーブルは細くて短かったので、 「太いほうが音がいいはずだ」と思い込み、 予算の範囲でOCF(無酸素銅)のケーブルを購入。 リア用にはFostexのミニスピーカーを買い、古い家の長押(なげし)に取り付けた。

サラウンドのディレイ(遅延)を最大にして、 ステレオ音声のビデオを片っ端から観まくった。 あの頃の“背後から音が飛んでくる魔法”は、今思い出しても胸が熱くなる。

■ サラウンドが良くなるほど、物足りなくなるもの──それは画面の大きさだった

NEC AV-300で背後から音が飛んでくる体験をしてしまうと、 次に気になり始めたのは“画面の小ささ”だった。

当時使っていたのは、14インチの4:3ブラウン管テレビ。 パソコンもつなげられるタイプで便利ではあったけれど、 映画を観るにはさすがに小さい。

特にショックだったのは、テレビ放映の映画が左右カットされていたことだ。 『スター・ウォーズ』のようなシネスコ作品は、 本来の横長の画面を4:3に収めるために、 左右が大胆に削られていた。

「本編もカットして、画像もカットすんのかよ!」

と本気で驚いたのを覚えている。

 

■ 中古で手に入れた27インチモニターが“世界を広げた”

そんなある日、中古の27インチモニター(チューナーレス)を譲ってもらった。

今で言えば24インチモニター相当の表示サイズだけど、 当時の僕には“映画館が家に来た”くらいの衝撃だった。シネスコ映画は上下に黒マスクが入るものの、 左右が切れないだけで満足度が段違いだった。

ただし、ブラウン管は画面が大きくなるほど奥行きも増える。 27インチともなると、重さも相当だ。 友達に玄関まで運んでもらい、 そこから居間まで一人で運んだときの苦労は今でも忘れない。

家庭用ブラウン管で27インチは“大型”の部類で、 その上に29インチ、 AVブームのピークには37インチなんて怪物も登場した。 あれはもう、ドラム式洗濯機2台分くらいの存在感だった。

しかも当時のブラウン管は、 電子銃が均一に当たるように、 今とは逆向きに画面が湾曲していた。 あの独特の丸みも、80年代の映像体験の一部だったと思う。

まとめ

劇場の映画とテレビ放映の映画が、こんなにも違うのか──その衝撃があまりに大きくて、気づけば僕はこの先ずっと、サラウンドと大画面を追い求めることになった。

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